ひび割れホワイトボード

サハーにおける真人間となるために四苦八苦しているプシュケー的主体はゲデの導きによりその構造領域を集合的無意識まで遡りアストラル光を媒体にSurfaceを通じて宇宙と繋がり内なる自己との対話を繰り返す無限の虚無を表記し続けるただの社会復帰日記

先が読めても面白い映画「君の名は。」見てきた(ネタバレ感想)

 圧倒的成長を実現するために休日出勤+翌日早朝出勤をキメた朝。あまりに自分がみすぼらしく惨めに感じ、家でふて寝をしていたものの、やっぱり今日を良い日にすべく、フォロワーさんに背中を押され、前々から見たいと思っていたがタイミングを掴めなかった映画「君の名は。」を見てきたので以下その感想。

 

 

1,圧倒的映像美
 当然ながら絵がとても綺麗。というより8割型この映像美を見に来たようなもの。新海誠さんの映画をスクリーンで見るなんていつぶりだろう・・・と感じながら1シーン1カットに至るまでアニメーションにおける映像美というものを堪能できた。否かの映画館だったので仕方がないが、可能ならより施設の整ったところでもう一度見直したいと思える程に価値がある映像だった。

 

2,音楽も良い
 映像美だけでなく音楽も良い。事前情報で音楽はRADWIMPSと聞いたときは、おいマジかwと素で思ったが、劇中で使用される4つの主題歌はどれもアニメーションとマッチしておりとても良い。アニメにおいて、音楽のインとアウトが綺麗だととても良い印象を覚えるが、この作品はそれが本当に綺麗に作用している。終わってみればベストな選択だったのだなぁと感心した。
 劇中歌だけでなく、劇中に使用されるBGMもそれぞれよい。OSTがあるなら欲しいと思えるクオリティで、いわゆる家具の音楽にしたいと感じた。

 

3,声優
 アニオタだけど声優はあまり拘りがなくて、むしろ最近は普通の俳優さんを浸かっても技量が高いのか指導が良いのかはたまたその両方か、普通に聞けるよなーとしみじみ思う。取り立てて目くじら立てる程のこともなく映画への没入感の妨げにはならなかったなと感じた。あと、長澤まさみ(奥寺先輩)が意外と良かったのが意外。

 

4,話の構成
 これ!これがかなり引っかかった!というよりも、一般受けするような構成を狙っていただなと感じた。可能な限り事前の情報は入れずに見ることができたけど(知っていたのは予告編で語られている事、製作委員会方式での制作、すごいヒットしていること程度)、一番気になっていた脚本に川村元気*1を始め東宝との協同作業であり、新海誠は主に映像面を担当と聞いていた。見始めてみると、最初の導入10分でなんとなく作品全体のディテールがわかる。それに加えて起承転結の「転」部分がすけて見えてくる(隕石が物語の障害及び脅威で、口噛み酒と組紐は障害と脅威を乗り越える鍵なのだろう、とか)。最初の三葉が瀧くんに入れ替わったシーンで「転」部分における大きめのフラグが先に見えてしまった(東京のニュースや電車、町並みで、瀧くんと三葉の時間軸が同じでない事とか)。その後もフラグの説明より先にフラグの内容が透けて見えてくるシーン(古典の授業で黄昏時の語源に片割れ時というものがある→二人が別離するタイミングかな?、瀧くんが腕に組紐つけてる→これ過去に会ってるよね?等など)がいくつかチラホラ。
 昔、アイランド*2という映画を見た時、開始10分ほどでラストまでの脚本構成が予想できてしまった事があり、すごく退屈な映画だったと感じたことがある。「君の名は。」でも同じことが・・・と少々不安に思ったが、結果から言うと、映画の内容が先にわかってしまっても、ちゃんと楽しめるのだなと感じられた。
 特にこの作品における起承転結の「転」部分、普通ここが一番おもしろいわけだが、この作品では瀧くんと三葉が御神体の山で同じ場所に居り、声が届いているのに会えないというシーンがあるが、ここまでが「転」部分かと思っていた。シーンの盛り上げ方も上手く、ここで二人は会えてハッピーエンドでもいいんじゃないの?と思ったが、作中のすべての問題はまだ未解決(隕石による災害)であり、やはりここでは終わらない。
 その後、隕石による災害回避のシーンは「転」部分において再度、起承転結を綺麗に行う。短いシーンに様々な人間や感情が行き交い、疾走感を感じながらもこころを揺さぶろうとしてくる。東京ゴッドファーザーズのラストシーンのように感じた。隕石回避だけで一本できそうな程の構成を見せ、無事終了。舞台は数年後に移り、皆は社会人に。今までの新海誠作品ならここで会えずに終わるんだろうなぁ、でもそれじゃ秒速5センチメートルと変わらないか、等と考えていると、無事二人は再会しハッピーエンド。

 

最後に
 無事にハッピーエンドになりホッとした。この作品の主人公である二人は純粋にその恋路や人生を応援したいと思えるし、元々そうなるように作られたのだろう。製作委員会方式は結果的に良い作品となった。今年は製作委員会方式を全面的に否定させてヒットを飛ばしたシンゴジラと、その反対に位置するこの作品と、面白い年だった。
 別にストーリーの先を予想できたから偉いとかそんなことはどうでもよく、むしろもっと自然体に楽しみたいと思ったのだけど、頭が勝手にそう反応してしまうし仕方ない。それよりも、そういった状況になってしまった人でも(少なくとも自分は)楽しむことが出来た、という意味で良い映画だったと思う。
 映像、とくにアニメーションのカットは素晴らしい物が多々あり、久々にアニメーションという表現技法それ自体が楽しいと感じることができた。次はスクリーンと音響がもっと良いところでもう一度見たい。
 

*1:映画プロデューサーであり、寄生獣バケモノの子等のプロデューサーを勤めた方。億男の作者でもあり、もはや懐かしい電車男の企画をした方でもある。全部面白いよ!

*2:マイケル・ベイ監督のSFアクション。詳細はwikiでも見てください。