ひび割れホワイトボード

サハーにおける真人間となるために四苦八苦しているプシュケー的主体はゲデの導きによりその構造領域を集合的無意識まで遡りアストラル光を媒体にSurfaceを通じて宇宙と繋がり内なる自己との対話を繰り返す無限の虚無を表記し続けるただの社会復帰日記

最近読んだ本 『砕け散るところを見せてあげる』

 

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

 

  ネタバレ無しで書きます。知らないほうがきっと楽しめる。

 これも空いた時間の娯楽用。友人ととらドラの話をしていたところ、面白いからともらった本。

 内容は高3受験生の主人公といじめられている高1のJKとのお話。主人公はヒーローを夢見ているのでいじめを放っておけず、JKのいじめを知ってそれを助けるたところから話に巻き込まれていく。

 感想としては多少はラノベっぽいが、やはり竹宮さんらしい適度に心をグサグサ刺していく。いじめを助けるってとても勇気がいること。それでも主人公はヒーローとなるべく(ヒーローのモデルは憧れの父親)勇気を振り絞る。こういうのって、純粋にすごいなと感じる。私は仕事でも能力は低く、またタフでもない。ただ、同期からもらえた評価の一つに「自分を持っていて曲がったことが嫌い」というのがあった。それが正しいかはさて置き、働いていて曲がらずに自分を通そうとすると、勇気がいる。当然失敗もあったし、何だコイツと思われるだけで終わったこともあった。もっと要領よくやれたらといつも考えているし、自分を通すにはそのための準備や根回し、技術を論理建てて考え実行しなければと理解できたのも最近の話。そういう自分からすれば、主人公のような真っ直ぐな青年は見ていて眩しい。でも、嫌味を感じさせない書き方をしている。

 加えて、竹宮さんの書き方だ。私はこれをとても気に入っていて、心を刺してくるといつも表現している。作中の人付き合いの中でドキッとさせたり、考えさせたり、悩ませたりと揺さぶりをかけてくる。これが小説というフィクションだからこそ楽しめる揺さぶりだと思う。

 

 さて、本書の面白いところは構成にある。帯には「最後の一文、理解したとき、あなたは絶対、涙する」とデカデカと書いてある。そして一読目、ラストまでいくとどうもしっくりこない終わり方をする。そして本書は再読することでより楽しめる構成となっていることに気付かされる。終盤に至るまでは娯楽性の高い読み物であったものの、最後まで行くとなるほどこれはと思わせる構成、二重に楽しませてくれた。そして再読後にどう解釈するかの楽しみもある。一冊で三度美味しい。